東京高等裁判所 平成2年(行ケ)94号 判決
一 請求の原因一ないし四は、当事者間に争いがない。
二 認定判断の誤り第1点について
参加人は、本願発明における中間リングが本体に対して取りはずしが可能であり、第一引用考案はそうでないにかかわらず、その相違点を看過したと主張する。しかし、本願発明の特許請求の範囲においては、実施態様として、中間リングを本体から取りはずすことが可能なものが記載されているが、これが本願発明の必須要件となつているとは認められない。
その理由は、次のとおりである。
1(一) 一般用語としての、「取付ける(とりつける)」の意味は、「物を他のものに装着する。器械などを特定の場所や他の物に装着する。」ということで、語頭の「取(とり)」は、動詞の前に付けて、語調を整えたり強めたりする働きをする接頭語であり、後半の「付ける(つける)」に基本的な意味があること及び「取付ける」の語は右の意味以上に、その取付けたものが取りはずし可能であるか不能であるかを限定する意味はなく、取りはずし可能な場合も不能な場合も含むことは、当裁判所に顕著である。
また、「取付ける」という語が、技術用語として、一般用語とは異なる意味を有すること、特に、取りはずし可能に取付けるという限定された意味を有することを認めるに足りる証拠はない。
(二) 原本の存在及び成立について当事者間に争いがない甲第二号証の一ないし三及び甲第三号証によれば、本願明細書中の特許請求の範囲第(1)項は、前記請求の原因三の本願発明の要旨のとおりであり、そこで「本体取付け装置は、雄ねじが設けられた中間リング2を有し、上記中間リング2は対物レンズに対して本体を回転可能に本体1の溝5に取付けられ、」とされている「取付けられ」が、取りはずし可能に取付けられたものか、取りはずし不能に取付けられたものかを限定する記載は、本願明細書の特許請求の範囲第(1)項中にも、同第(2)項ないし第(10)項中にもないことが認められる。
(三) 前記甲第二号証の一ないし三及び甲第三号証によれば、本願明細書中の特許請求の範囲第(9)項には、「同一外径のリングでそれぞれ構成される複数の取付け中間部材2から成り、それらリングの外側へねじ立てしてある内部カラー3を各種の直径にしてあることを特徴とする特許請求の範囲第1から第8項までの任意の一項に記載の装置。」と記載されていることが認められ、同項に記載されたものは、内部カラー3を各種の直径にしてある複数の取付け中間部材2から成り、各対物レンズの寸法に合う直径の内部カラーの取付け中間部材を選択して本体に取付けることを前提としているものと認められるから、同項の取付け中間部材は本体に取りはずし可能に取付けられたものと認められる。
しかし、右特許請求の範囲第(9)項は、特許請求の範囲第(1)項が、取りはずし可能なものとも不能なものとも限定がないものと解しても、その中の取りはずし可能なものを右のような実施態様項としたものと解することができ、他方特許請求の範囲第(1)項が取りはずし可能なものに限定されると解しても、その一部を右のような実施態様項としたものと解することもできるから、特許請求の範囲第(9)項があることは、特許請求の範囲第(1)項の中間リングが取りはずし可能なものとも不能なものとも限定がないものと解すべきか、取りはずし可能なものに限定されると解すべきかを左右するものではない。
2 そこで、本願明細書の発明の詳細な説明の欄及び本願図面の記載について検討する。
(一) 前記甲第二号証の一ないし三、甲第三号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の欄及び本願図面には、特許請求の範囲第(1)項の中間リングは、取りはずし不能なものを除外する旨あるいは取りはずし可能なものに限定される旨の明示の記載はないこと、及び、中間リングについて次のとおりの記載があることが認められる。
(1) 市販で入手できる各種の型式の撮影装置の対物レンズの直径が異なつていることを考慮すると、実際上特にフイルタのような写真附属品のメーカーにとつて使用の可能性のある対物レンズの直径に対してそれぞれ必要な各種フイルタの範囲を総て準備する必要がある。このためこれら附属品の製造のコストがかなりに増加しかつメーカー、卸売商、小売商にとつて顧客の需要に十分応えるために極めて多数の各種部品から構成される莫大なストツクを準備せざるを得ないことになる(甲第二号証の二の五頁一〇行から二〇行まで)。
(2) 本発明は、市販で入手できる対物レンズの直径に総て容易に適合できる附属品保持装置を実施することを提案し、しかもこの装置が特に各種フイルタおよびレンズフードのような各種附属品を簡単かつ経済的に受け入れることができ、対物レンズに対してそれらフイルタの旋回および/または並進摺動の必要な相対運動をさせることができる(甲第二号証の二の六頁一行から七行まで)。
(3) 本発明の目的は、新規工業製品として、撮影装置に用いる附属品保持装置を提供するにあり上記保持装置は、好しくは一体にして成形された本体、この撮影装置の対物レンズへ本体をとりつける中間部材から成り、上記取付け部材が、対物レンズの雌ねじ部に対して雄ねじを設けたリングから構成されており、上記リングが、上記対物レンズに対する上記本体の相対回転運動をさせるように、上記本体の適当な凹部内で配設させるよう受け入れられている(甲第二号証の二の六頁八行から一七行まで)。
(4) 中間円形取付けリングは、外側で半径方向にこのリングから突出させ、かつ雄ねじ立てをしてある内部カラーを備えるのも有利である。この実施例の場合、本取付けリングを受け入れるためには本体の凹部は本体の円形切取部の大部分のまわりに延長されかつリングの外径に等しい直径の環状溝の形状につくつてあり、さらに当接部が設けてありそのため凹部内でリングを横方向に移動させないようにして本体とリングとの相対回転をさせる。上記当接部の後方でリングの係合とその引出しは本体を構成する材料の弾性を利用して行なわれる(甲第二号証の二の九頁九行から二〇行まで)。
(5) このように実施した本装置の唯一つの本体では、一揃の上記のような取付けリングを設けることができ、リングのうちのいづれかの外径が凹部の直径と同じかまたは等しくまたリングのいづれかの雄ねじ立てしてあるカラーの外径が、市販で入手できる対物レンズの寸法にそれぞれ等しいことが分かる。取付けリングを簡単に交換することによつて、対物レンズの寸法すべてに対して本発明による装置を適合させることができることも理解できる(甲第二号証の二の一〇頁一行から一〇行まで)。
(6) 本発明の別の長所と特徴は、添附図面を参照しながら本発明の装置の特別実施例の限定しない例として示してある以下の説明を読めば理解できるだろう(甲第二号証の二の一〇頁一一行から一四行まで)。
(7) 本体1は、溝5の中へ取付け中間リング2を導入する部分で、本体の溝5の中で取付け中間リングを保持するためのほゞ三角形状の当接部7を備えている。環状溝5によつて構成される本体の凹部で取付け中間リング2を取りつけるためにリング2は、当接部7の後方でクリツプ止めされるまで第2図(本判決別紙本願図面第2図)の矢印Aで概略(「概器」とあるのは誤記と認める。)示してある方向に摺動させることによつて導入され、溝5と環状中間リング2との寸法が、それぞれ一度本体へリング2を取りつけると本体に対するリングの相対回転運動が総てできるようにしてある。溝5は、半円よりも若干多く延長されており、そのため溝へ導入されている中間リング2を弾性的に維持させるようにしてある(甲第二号証の二の一一頁八行から一二頁一行まで)。
従つて、本発明による附属品保持装置のために取付けリングを適宜選択することによつて撮影装置のすべての対物レンズで附属品の組立体を取りつけることができることが分かる(甲第二号証の二の一四頁一九行から一五頁二行まで)。
(8) 本発明による装置の本体1は、取付けリングも旋回フイルタも同様取り付けまた取り外すため若干弾性を付与できるプラスチツク材料の成形によつて実施するのが好しい。…しかしながら、本発明が図示せる実施例ならびに例として挙げられた材料のみに限定されないことは明瞭である(甲第二号証の二の一五頁九行から一六行まで)。
(9) 本願図面には、中間リングが、附属品保持装置本体の溝に取りはずし可能に取付けられるものであることが図示されている(甲第二号証の三。本判決別紙本願図面参照。)。
(二) 右に認定した本願明細書の記載中(1)は、従前技術の問題点を、(2)、(3)はこの問題点を踏まえた、本願発明の目的、効果及び構成を記載したものと認められる。
即ち、右(一)(1)の記載によれば、従前は、市販の各種の撮影装置の対物レンズの直径が異なつているためフイルターのような写真附属品のメーカーは使用の可能性のある対物レンズの直径に対してそれぞれ必要な各種フイルターの範囲を総て準備する必要があり、そのため附属品の製造のコストが増加し、且つ、メーカー、卸売商、小売商は極めて多数の各種部品から構成される莫大なストツクを準備せざるを得ないという問題点があつたことが認められ、右(一)(2)の記載によれば、本願発明は、市販の撮影装置の「対物レンズの直径に総て容易に適合できる附属品保持装置」を撮影装置の対物レンズに装着し、この附属品保持装置の附属品受入れ装置に各種フイルター及びレンズフードのような各種附属品を簡単かつ経済的に受け入れるようにし、且つ、対物レンズに対してそれらフイルターの旋回及び、又は並進摺動等の必要な相対運動をさせることができるようにしたものであることが認められる。
そして、右認定の、附属品保持装置が市販の撮影装置の「対物レンズの直径に総て容易に適合できる」ための構成については、右(一)(3)のとおり、要するに、「その取付け中間部材は、対物レンズの雌ねじ部に対して雄ねじを設けたリング(中間リング)から構成されており、右リングは、対物レンズに対して本体を相対回転運動をさせるように、本体の適当な凹部内で配設させるよう受け入れられているものである」旨の記載があるのみである。
つまり、市販の撮影装置の「対物レンズの直径に総て容易に適合できる」ための構成として、中間リングが附属品保持装置の本体から取りはずし可能で、対物レンズの雌ねじ部に対応する雄ねじを有する中間リングを選択し、これを対物レンズに螺合させ、その中間リングに附属品保持装置の本体を取付けることによつて、「対物レンズの直径に総て容易に適合できる」のか、その他の方法、例えば、中間リングが附属品保持装置の本体から取りはずし不能で、対物レンズの雌ねじ部に対応する雄ねじを有する中間リングの取付けられた附属品保持装置を選択し、その中間リングを対物レンズに螺合させることによつて、「対物レンズの直径に総て容易に適合できる」のかの限定はない。
そして、右前者の構成(取りはずし可能)によつても、後者の構成(取りはずし不能)によつても、市販の撮影装置の「対物レンズの直径に総て容易に適合できる附属品保持装置」を撮影装置の対物レンズに装着し、この附属品保持装置の附属品受入れ装置に各種フイルター及びレンズフードのような各種附属品を簡単かつ経済的に受け入れるようにし、且つ、対物レンズに対してそれらフイルターの旋回及び、又は並進摺動等の必要な相対運動をさせることができるようにするとの本願発明の目的は達成できるものである。
なお、右後者の構成の場合、中間リングが、本判決別紙本願図面中第1図に図示された中間リング2のような形状では、これを対物レンズに螺合させることは困難であるが、附属品保持装置本体の凹部に受け入れられるリング部分と雄ねじの設けられた環状カラー部分の中間に適宜フランジを設け、そのフランジを手指で回転させることにより対物レンズに螺合させることができるようにすることは、設計上の選択事項にすぎない。
(三) 前記(一)の(4)、(5)、(7)、(8)及び(9)には、中間リングが、附属品保持装置本体に対して取りはずし可能に取付けられる構成が記載されているが、それらの記載はそれぞれ実施例についてのものであることは、その記載自体から((9)については(8)の記載から)明らかであり、他方、前記甲第二号証の一ないし三、甲第三号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の欄及び本願図面には、中間リングが取りはずし不能の構成をとる実施例の記載の無いことが認められる。
しかし、実施例として、取りはずし可能の態様のみが記載されているからといつて、特許請求の範囲がその態様に限定されるものではないことはいうまでもない。
3 以上のとおり、一般用語、技術用語としての「取付ける」という語の意味、本願発明の特許請求の範囲の記載について右1に認定判断したこと、本願明細書中の発明の詳細な説明の欄及び本願図面の記載について右2に認定判断したことを併せ考えれば、本願発明における、中間リング2が「本体1の溝5に取付けられ」るとは、取りはずしができるもの及び取りはずしができないもののいずれをも含むものであると認められる。
右認定に反する参加人の主張は採用できない。
4 請求の原因五1の(四)の主張中、中間リングが本体に対して取りはずし可能であるという構成が、第一引用例には記載されておらず、かつ、それを示唆する記載もないことは当事者間に争いがなく、右事実及び原本の存在及び成立について当事者間に争いのない甲第四号証(第一引用例)によれば、第一引用例記載のものの本体取付け部材である爪部が設けられた係合部は本体(基体)とは取りはずし可能ではないものと認められる。
5 以上のとおり、本願発明は、中間リング2が本体1に取りはずし可能に取付けられたもの及び取りはずしが不能に取付けられたもののいずれをも含むものであるから、取りはずしが不能に取付けられた場合については、第一引用考案と一致し、参加人主張のような相違点の看過は認められない。
そして、右場合について、本件審決のその余の判断に参加人が主張する認定判断の誤りが認められなければ、結局本願発明はその一部に特許法第二九条第二項の規定に該当する発明を含むものとして、特許を受けることができない発明であることになるから、更に進んで判断する。
三 認定判断の誤り第2点について
1(一) 請求の原因四の本件審決の理由の要点のうち4(一)相違点<1>についての認定判断中、一般にカメラ等における部材の取付け手段として、爪片の係合によるいわゆる「バヨネツト結合」を用いること、及び雄ねじ(雌ねじ)の係合によるいわゆる「螺合結合」を用いることはいずれも従来より周知の技術的事項であることは参加人の自ら認めるところである。
(二) また、請求の原因四の本件審決の理由の要点のうち2中、第二引用例には、「カメラの対物レンズ用フイルター保持装置において、金属枠3´にフイルターを嵌着すると共に、この金属枠にカメラの対物レンズに捻回かつ着脱自在に取付ける際、該金属枠に着脱リング7を捻回自在に取付け、雄ねじが設けられた着脱リングを螺合方式によりカメラへ取付けるように構成した、フイルター保持装置。」に係る考案が記載されているものと認められ、かつ上記「捻回自在」は、第二引用例全体の記載事項及びその趣旨から「回転(保持)自在」と同義ないし等価と認められるとの認定判断も参加人の自ら認めるところである。
(三) 請求の原因四4(一)の相違点<1>についての認定判断中、第二引用考案には、カメラの附属品であるフイルターの取付けにおいて、本体取付け部材である「雄ねじが設けられた着脱リング(「中間リング」に相当する。)」(いわゆる螺合結合)による取付け手段を用いたフイルター保持装置が示されていることも参加人の自ら認めるところである。
また、右(二)の事実によれば、中間リングに相当する第二引用考案の雄ねじが設けられた着脱リングは、フイルターを嵌着した金属枠に捻回自在、即ち、回転(保持)自在に取付けられていることは明らかである。
そして、右着脱リングを金属枠に回転(保持)自在に取付ける技術的手段の一つとして、着脱リングを金属枠に設けられた何らかの形態の溝に取付ける方法があることは技術常識である。
(四) よつて、第一引用考案の「爪片が設けられた係合部」(バヨネツト結合)を用い、「本体に一体」に取付けられた本体取付け部材に代えて、本願発明の「雄ねじが設けられた中間リング」(螺合結合)を用い、「回転可能に本体の溝」に取付ける構成を想到することは、第二引用考案の本体取付け部材である「雄ねじが設けられた着脱リング」から、当業技術者が容易になしうることと認められる。
これと同旨の本件審決の相違点<1>についての認定判断は正当である。
2 参加人は、請求の原因五2(二)のとおり、「第一引用例に記載された「爪片が設けられた係合部」に代えて、第二引用例に記載された「雄ねじが設けられた着脱リング」を適用することはできない。」旨主張する。
しかし、第一引用例に記載された「爪片が設けられた係合部」に代えて、第二引用例に記載された「雄ねじが設けられた着脱リング」を適用するとは、第二引用例に記載されたその技術思想を適用する趣旨であつて、第二引用例中の図面に実施例として図示されたものの形状をそのまま適用する趣旨ではないことは明らかであり、第二引用例に記載された右技術思想を適用するにあたつて、着脱リングをその着脱にあたつて十分な回転力を与えられ、かつ、撮影装置の鏡筒部の操作リング等の操作に支障のない大きさ、形態にすることは設計上の選択事項にすぎない。
また、参加人は、請求の原因五2(三)のとおり、「螺合結合」では本体取付け部材を本体と回転可能に設ける必然性が高いというような技術常識は全く知らない旨主張する。
しかし、第二引用考案の雄ねじが設けられた着脱リングは、フイルターを嵌着した金属枠に回転自在に取付けられていることは前記認定のとおりであり、本件審決は、第一引用考案の「爪片が設けられた係合部」(バヨネツト結合)を用い、「本体に一体」に取付けられた本体取付け部材に代えて、本願発明の「雄ねじが設けられた中間リング」(螺合結合)を用い、「回転可能に本体の溝」に取付ける構成を想到することは、第二引用考案の本体取付け部材である「雄ねじが設けられた着脱リング」から、当業技術者が容易になしうることと認められるとの趣旨を判断しているのであるから、仮に、「螺合結合」では本体取付け部材を本体と回転可能に設ける必然性が高いとはいえないとしても、本件審決の、相違点<1>についての判断が誤つているということはできない。
よつて、参加人の認定判断の誤り第2点の主張は認められない。
四 認定判断の誤り第3点について
1 成立について当事者間に争いのない乙第二号証の一ないし四(加納四十二著「家具の実用工作法」昭和二三年九月二〇日三共出版株式会社発行)には、戸棚の引き戸を、敷居溝と鴨居の溝で保持して建て付けることが記載されていることが認められ、一般に、板状のものであることの明らかな家具の引き戸、日本家屋の戸、障子、ふすま、窓等の引き戸を敷居溝と鴨居の溝の一対の溝で保持することは、極めてありふれた慣用手段であること及び一般に板状のものを一対の溝で保持することも慣用手段であることは当裁判所に顕著である。
2 また、カメラへのフイルター等の装着方法に限つてみても、成立について当事者間に争いのない乙第一号証によれば、実公昭四七―五四〇七号実用新案出願公告(昭和四七年二月二五日公告)には、昭和四三年四月三日実用新案登録出願にかかる、カメラのレンズ枠に着脱自在に取付けるフイルターホルダーに関する、名称を「フイルターホルダー」とする考案につき、板状のフイルターを一対の溝に挿入して保持する手段が記載されていることが認められる。
また、成立について当事者間に争いのない乙第五号証によれば、実公昭五二―八九一二四号実用新案出願公告(昭和五二年七月四日公告)には、昭和五〇年一二月二六日実用新案登録出願にかかる、名称を「ゼラチンフイルターフレームのレンズ取付装置」とする考案につき、板状のゼラチンフイルターを入れたフレームを一対の溝に挿入して保持する手段が記載されていることが認められる。
更に、成立について当事者間に争いのない乙第六号証及び乙第七号証によれば、特開昭四九―七五三二四号公開特許公報(昭和四九年七月二〇日公開)には、昭和四八年一〇月四日特許出願にかかる、カメラにフイルター等の附属部品を結合するための装置に関する、名称を「カメラ附属部品の保持装置」とする発明につき、フイルター等の板状の附属部品を一対の溝(チヤンネル)に挿入して保持する手段が記載されていることが認められる。
3 右認定の事実によれば、カメラ等へのフイルター等附属部品の装着方法の技術分野においても、フイルター等の板状部材を一対の溝で保持する技術は、本願出願当時慣用手段であつたものと認められる。
本件審決の、保持手段として一対の溝を用いて保持することは慣用手段であるとの認定判断は正当であり、また、右慣用手段の認定に証拠を引用しなかつたことに違法はない。
そして、フイルター等の板状部材を一対の溝で保持する技術が、本願出願当時慣用手段であり、間隙を用いて保持することが第一引用例に記載されている以上、「フイルター等の板状部材を保持する場合、該部材の端部を本体に設けた一対の溝に挿入するかあるいは間隙に挿入するか等どのような保持手段を採用するかは、その附属品の形状及び使用態様に応じて当業技術者が適宜自由に定めうることと認められるので、第一引用考案の間隙を用いる保持手段に代えて一対の溝を用いる保持手段を適用することは当業技術者が容易になしうることと認められる。」との本件審決の認定判断は正当である。
4 参加人は、請求の原因五3の(三)のとおり、本願発明の一対の溝を用いる技術は、フイルター等の光学附属品、特に偏光フイルターのようなものを取付けるという用途において、枠部材等に設けられた方向指標を視認可能にすることが容易であるという、間隙にはない顕著な効果を有する旨主張する。
しかし、前記甲第二号証の一ないし三及び甲第三号証によれば、右のような効果は、本願明細書に記載されていないことが認められる上、フイルター等の板状部材を保持する場合、該部材の端部を本体に設けた一対の溝に挿入するかあるいは間隙に挿入するか等どのような保持手段を採用するかを定めるにあたつて、当業技術者が当然考慮すべき附属品の形状及び使用態様には、偏光フイルターなど枠部材等に設けられた方向指標を見る必要性のある附属品を使用する場合もあることを含むものと認められるから、右のような効果があることを主張し、そのことを理由に、本願発明のように一対の溝により附属品を保持するように構成することは、当業技術者が容易になしうることではないということはできない。
五 以上によれば、二5に判示した、本願発明の中間リング2が本体1に取りはずし不能に取付けられた場合について、本件審決のその余の判断に参加人主張の認定判断の誤りが認められないから、結局本願発明はその一部に特許法第二九条第二項の規定に該当する発明を含むものとして、特許を受けることができない発明である。
よつて、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める参加人の本訴請求は理由がないから棄却することとする。
〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。
撮影装置の対物レンズ用附属品保持装置において、本体1と、撮影装置の対物レンズに本体を取付ける装置と、附属品を受入れる装置と、を有し、本体取付け装置は、雄ねじが設けられた中間リング2を有し、上記中間リング2は対物レンズに対して本体を回転可能に本体1の溝5に取付けられ、上記本体は中間リング2用の溝5とは反対側に少なくとも一対の溝9、12、14を有し、一対の溝の各々が附属品を受入れ可能なように構成されていることを特徴とする装置。(以下本願発明につき、本判決別紙本願図面参照。)
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
別紙 本願発明図面 (1)
<省略>
(以下省略)